開業準備の前に、商売の現実も知っておこう。
初めてキッチンカーを始めるには?まず決める3つのこと

最初に「誰に・何を・どこで売るか」を仮決めします。車両だけを先に比較せず、出店候補、メニュー、提供数から準備を具体化しましょう。以下の基本編では売上・費用・車両・営業準備を順に確認できます。

一度に全部覚えなくても大丈夫です。
まずは01〜03で、売上の基本・店舗との違い・働き方をつかみましょう。次に04〜06で売り方を考え、07〜12で開業準備を確認します。気になるところから読み返して、自分の計画を少しずつ具体化してください。
最初の項目「売上と利益」から読む →01 売上と利益。まず、何食売るかを考える

キッチンカーの計画は、「誰に、何を、どこで、いくらで売るか」から始まります。売上の基本は客単価 × 販売件数。月の売上は、出店日ごとの売上を足して考えます。
仮の数字で考える例です。売上予測ではありません。
客単価1,000円 × 80件 = 1日売上80,000円
80件売れるという仮定で式を理解するための例です。来場者数が多くても、その人数が買うとは限りません。
売上から食材費、容器代、出店料、人件費、燃料費などを引き、出店ごとの採算を見ます。さらに駐車場代、保険、整備費なども含めて月の収支を考えます。
- 1日何食売れば、その日の費用をまかなえるか。
- 仕込みや移動も含め、月に何日営業できるか。
- 雨天中止や売上が低い日があっても、資金が足りるか。
- 本人・家族の生活費と返済を支払った後に、いくら残るか。
利益と手元の現金は別々に確認します。借入金の元本返済は利益計算上の経費とは別の支出です。車両購入、仕入れ、入金、返済の時期を並べた資金繰り表も用意しましょう。
ちょっとクイズ:売上8万円なら、8万円を自由に使える?
食材、容器、出店料などの支払いが待っています。売上・利益・手元の現金を分けて考えることが、最初の一歩です。
02 固定店舗とキッチンカーの違い

キッチンカーは、お客様がいる場所へ店ごと移動できます。その強みを生かすには、出店場所を確保する営業活動も仕事として組み込むことが大切です。
| 比較すること | 固定店舗 | キッチンカー |
|---|---|---|
| 営業場所 | 決まった場所で営業する。 | 確保した出店場所へ移動して営業する。 |
| 主な初期費用 | 物件取得、内装工事、厨房設備など。 | 車両購入、製作・改装、厨房設備など。 |
| 継続する費用 | 店舗家賃、共益費、設備維持費など。 | 出店料、駐車場代、車両維持費、必要に応じた仕込み場所の費用など。 |
| 集客 | 店舗の立地を生かして来店を増やす。 | 狙うお客様がいる場所へ出店し、予定を知らせる。 |
| 厨房と販売 | 物件の広さに応じて厨房・客席を設計する。 | 限られた車内で調理・保管・受け渡しを組み立てる。 |
| 営業の変え方 | 移転には物件や内装などの調整が必要。 | 出店先を確保できれば、場所や曜日の組み合わせを変えられる。 |
03 営業スタイルと、自分に合う働き方
イベントの「買い取り」から考えてみよう。

主催者や企業が、事前に決めた数量・金額で出店を依頼し、来場者へ商品を提供する売り方です。仕込み量と受注金額を事前に把握しやすい点が、初心者にすすめたい理由です。
筆者は携帯電話イベントの買い取り専門でスタート。売上は1年目900万円、2年目1,800万円、3年目4,000万円超になりました。
これは筆者の売上実績で、利益額や売上の保証ではありません。受注前に、提供数・料金・費用・中止時の扱い・支払日を確認しましょう。
買い取りの仕組みと、最初の営業方法を見る →- 平日のランチ営業:オフィス街や工場で、昼休みの需要に合わせる。
- 土日のイベント営業:イベントやマルシェの開催日に合わせて出店する。
- 夫婦や少人数で独立:調理・会計・受け渡しなどの役割を組み立てる。
- 既存飲食店の販路拡大:店の商品を、新しいお客様に届ける。
- 企業の新規事業・商品PR:販売以外の目的も含めて運用を考える。
向き・不向きは、調理が好きかだけでは決まりません。接客、運転、仕込み、出店先への営業、売上管理まで含めて考えます。販売時間に加え、買い出し・準備・移動・片付けの時間も予定に入れ、少人数で無理なく回る仕事量を確認しましょう。
05 出店場所を探し、自分から提案する

候補はオフィス・工場、商業施設、住宅展示場、大学、地域イベント、マルシェ、スポーツ・音楽イベント、公園など。施設や主催者の募集情報を探す方法と、管理者へ直接提案する方法があります。場所を見つけることと、出店の承諾を得ることは別の段階です。
AIで、現場探しを毎日の習慣に。

GoogleやSNSでの検索に、ChatGPTなどのAIで候補を整理する方法も加えてみましょう。定期タスクが使える場合は、営業エリアの出店募集を毎朝8時に調べるよう設定できます。
出店資料にまとめること
- 商品写真、メニュー、価格、提供できる食数や速度。
- 車両の寸法、販売窓口の位置、必要な電源など。
- 希望日、営業実績、連絡先。許可・保険等は先方の提出条件に合わせる。
申し込む前に確認すること

出店料が定額か売上歩率か、電源・水の使用条件、搬入・撤収時間を確認します。来場者数だけでなく、客層、競合店数、販売時間、区画の配置、出店料まで含めて判断しましょう。単発イベントと定期出店を組み合わせると、月の営業日を具体的に組み立てやすくなります。
06 看板・SNS・AIで、商品と出店予定を伝える

看板とメニュー表は、離れた場所からでも「何を、いくらで売っているか」がわかることが基本です。SNSには営業日、場所、販売メニューを載せます。商品写真や出店実績は、次の出店先への提案資料にも使えます。
ChatGPTなどのAIは、営業先を探す切り口の整理、問い合わせメール・出店応募文・SNS投稿の下書き、売上記録の振り返りに使えます。例えば「平日ランチを必要とする施設にはどんな種類があるか」と候補の考え方を広げ、実際の営業先は自分で調べて絞り込みます。
AIが挙げた施設名、募集日程、出店条件は、主催者や施設の公式情報で確かめてから使ってください。下書きも、自分の商品・設備・実績に合う内容へ直して送ります。
07 開業までの流れを、8つに分ける
- 考える誰に・何を売る?
- 計画する場所・お金・条件
- 準備する車両・設備・出店先
- 試してみる調理・受け渡し
- 育てる営業して振り返る
- 誰に、何を、どこで売るかを考える。
- 出店候補地を調べ、メニュー・販売価格・必要な販売数を仮決めする。
- 調理工程に合う営業許可・車両・厨房設備の条件を整理する。
- 見積りと収支計画を作り、資金を準備する。
- 車両製作・設備準備と並行して、出店先の開拓を進める。
- 必要な申請・検査・登録を済ませる。
- 試作、調理と受け渡しの練習、告知を行う。
- 営業を開始し、売上・利益・作業の改善を続ける。
これは準備を整理するための目安です。車両・設備の検討と出店営業は行き来しながら進めます。許可の確認は最後まで後回しにせず、購入・製作前にメニューと工程を持って保健所へ相談しましょう。
08 開業資金は、車両代と開業後のお金を分ける

最初の予算には、次の費用を一覧にして入れます。購入するものだけでなく、営業を続けるための資金も確保します。
- 車両購入、製作・改装。
- 冷蔵庫、調理機器、電源などの設備。
- 看板、ラッピング、メニュー表。
- 営業許可、登録、保険など。
- 食材、容器、消耗品の初期仕入れ。
- 駐車場や仕込み場所の準備。
- 開業後の運転資金と、本人・家族の生活費。
資金調達ごとの役割

自己資金は、自分で用意する資金です。事業に使う分と生活に残す分を分けます。融資は設備資金や運転資金を借り入れる方法で、使途や審査、返済条件を確認します。車両ローンは、対象となる車両・改装費の範囲、金利、返済期間を比較してください。
補助金・助成金は制度ごとに対象者・対象経費・申請時期・支払時期が異なります。例えば小規模事業者持続化補助金では、交付決定後の事業実施や実績報告等を経て入金されます。採択前の購入や、車両代が当然に対象になると見込まず、公募要領を確認します。入金まで立て替える資金も必要です。
車両代だけで、開業予算を使い切らない。
売上が安定するまでの期間や、修理・雨天中止を想定して資金繰りを組みます。
09 車両は、今の営業と今後の幅から選ぶ

価格に加え、機器の寸法、冷蔵・冷凍容量、通路、提供窓口、出店先の区画を見て選びます。新車・中古車では状態や保証が違うため、購入後の整備、故障時の対応、登録・車検も見積りと一緒に確認しましょう。
運転できるかは「1.5トン車」などの呼称だけでは判断できません。免許の取得時期・区分・条件と、実際の車両総重量、最大積載量などを照らし合わせます。搭載する水・機器・食材の重量も、車両の計画に含めてください。
10 厨房設備は、調理の流れに合わせて選ぶ
- コールドテーブル
- 食材を冷蔵保管しながら、天板を作業台として使える設備。食材の量、容器の寸法、必要な作業面積を合わせて選びます。
- グリドル
- 鉄板で焼く調理機器。肉、焼きそば、ハンバーガーなど、メニューと一度に調理する量に合わせて、鉄板の広さや加熱能力を考えます。
- フライヤー
- 唐揚げやポテトなどの揚げ物を調理する機器。油量、連続して調理する能力、清掃のしやすさを比較します。
- ホットウォーマー
- 調理済みの料理を温かく保つ設備。調理用の加熱機器とは役割が異なります。食品に合う保温温度と時間を決め、作り置き量と提供のタイミングを管理します。
シンク、手洗い設備、給排水タンク、作業台、収納、換気設備も必要な工程から配置します。「取り出す → 下準備 → 調理 → 盛り付け → 受け渡す」の動きが、汚れた器具を戻す動きとぶつからないかを確かめます。
電源の取り方、各機器の消費電力、同時使用時の負荷も一覧にします。ガス機器は配置、周囲との距離、換気、固定方法を含めて製作会社と相談してください。
洗浄用シンク:幅45cm × 奥行36cm × 深さ18cm以上。
当社の推奨であり、全国一律の法定最低寸法ではありません。使用する器具が洗えるか、管轄保健所の設備条件に合うかを別途確認します。
11 実車で確かめ、個別相談で具体化する

図面だけで判断せず、実際に車内へ乗り込み、広さ、通路、厨房機器の配置、収納、販売窓口の高さを体験しましょう。シャッターの開閉や施錠、手の届き方も実物で確認します。
仕込み、積み込み、搬入、販売、清掃、撤収まで、ひと通りの動きを想像してみましょう。販売したい商品、出店したい地域、予算、開業したい時期をメモしておくと、実車で確かめるポイントがはっきりします。
注文を受ける → 調理する → 盛り付ける → 渡す。
車内に立って、手を伸ばしてみる。ふたりで動いてみる。作業の流れを試すと、必要な広さが見えてきます。
12 営業許可・衛生管理・HACCP。安心して売り続けるために

売上をつくり、営業を続ける土台は、食中毒を出さないことです。この章は最後にまとめていますが、実際の準備では車両の購入・製作前から確認を始めます。
営業許可と保健所への相談

メニュー、調理工程、仕込み場所、車両の設備図を整理し、出店予定地を管轄する保健所に相談します。食品衛生責任者の資格・設置、申請・検査の流れも確認してください。東京都の案内では、自動車営業の申請書類に設備図面や食品衛生責任者の資格証明等が挙げられ、衛生管理計画も確認対象です。
車両の登録・車検と、食品の営業許可は別の手続きです。自宅などの仕込み場所がそのまま使えるとは限らないため、どこで何の工程を行うかまで相談します。
給排水タンク40L・80L・200Lの考え方

容量は、車内で行う調理工程、品目、器具・食器の洗浄、水の使用量などに関係します。一般に容量が大きいほど多くの水を使う工程を検討しやすくなりますが、「200Lなら何でも調理できる」という意味ではありません。40L・80L・200Lのどれが適切か、給水・排水それぞれの設備条件を管轄保健所に確認します。シンク、手洗い、冷蔵設備も一体で考えます。
日々の衛生管理を、記録まで習慣にする

スタッフの体調、手洗い、食材の受入れ、冷蔵・冷凍設備の温度、調理時の加熱、清掃を日々確認します。菌やウイルスごとの注意点は、食中毒予防の解説と前日の料理と再加熱の記事も併せて読んでください。
HACCP(ハサップ)の考え方を取り入れた衛生管理
- 決める管理する方法
- 確かめる営業中の状態
- ✓残す結果と対応
- 見直す記録と手順
計画 → 実行 → 記録 → 見直しを、繰り返します。
小規模な飲食店では、厚生労働省が内容を確認した手引書を参考に、衛生管理計画を作り、実行し、記録し、振り返ります。「何を、いつ、どう確認するか」と「問題があったときにどうするか」を事前に決めることが基本です。
- 計画する:一般的な衛生管理に加え、メニューごとの加熱・冷却・保管などの確認方法を決める。
- 実行する:決めた手順を担当者全員で共有し、その日の営業で守る。
- 記録する:確認結果と、不具合があった場合の対応を残す。
- 見直す:記録を振り返り、設備やメニューの変更に合わせて計画を直す。
書類を用意するだけで完了ではありません。自分の営業で続けられる確認と記録に落とし込みましょう。
制度・設備の参考:東京都「営業許可・届出の概要」 / 千葉市「キッチンカーの営業許可」
HACCPの参考:厚生労働省「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理」
